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派遣村をめぐる動きのまとめ

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2008-09年の年末年始に話題になった派遣村について、毎日新聞が1月2日~4日を中心にその経緯をまとめた。私が以前年越し派遣村の功罪という記事を書いたこともあり、資料として残す意味でここにアップする。

■<読む政治>官邸動かした派遣村 (2009年1月12日 毎日新聞)
 担当者:堀井恵里子、田中成之、佐藤丈一、坂口裕彦、田所柳子、高本耕太

上段右から河村建夫官房長官、大村秀章副厚労相、菅直人民主党代表代行、志位和夫共産党委員長。中段左は湯浅誠「年越し派遣村」村長=コラージュ・清田万作◇(その1) 与野党超え、電話リレー

今月2日夜、厚生労働省は東京・日比谷公園の「年越し派遣村」に集まった失業者向けに異例の講堂開放に踏み切った。失職と同時に人間の生存基盤までも脅かす経済危機の深刻さが、具体的な姿となって都心に表れ、与野党の議員と政府を突き動かした。
派遣村の湯浅誠村長(39)=NPO「自立生活サポートセンターもやい」事務局長=は焦っていた。入村者の数が予想を上回り、用意したテントからあふれ始めたからだ。

2日朝、隣接する厚労省に出向き、ロビーの使用許可などを文書で求めたが、正月休みで応対できる職員がいなかった。湯浅氏の電話作戦が始まった。
副厚労相の大村秀章(自民党衆議院議員・愛知13区)氏は、地元・愛知県での新年会回りを終えた午後1時ごろに電話を受けた。「100人以上オーバーしています。夜は気温が下がるので何とかしてほしい」。2人は年末にテレビの討論番組で同席し、互いの連絡先を教え合っていた。

◇(その2)人があふれている--異例の講堂開放

「分かった。今から東京に行く」と大村氏は新幹線に乗った。

民主党の菅直人代表代行(衆議院議員 東京18区)は、同党の山井和則衆院議員(京都6区)経由で要請を受けた。京都にいた山井氏は「今晩にはテントが足りなくなる」と湯浅氏から聞き、党緊急雇用対策本部長の菅氏につないだ。
菅氏は舛添要一厚労相(自民党 参議院議員 比例区)に電話で「今晩が問題なので早く動いた方がいい」と伝えると、午後1時半に東京・吉祥寺の自宅を出て日比谷に向かった。車中で首相官邸を動かす必要があると考え、定期的に会談している自民党の加藤紘一元幹事長(衆議院議員 山形3区)を頼った。「官房長官に話をしたいので仲立ちをお願いしたい」

加藤氏は河村建夫官房長官(自民党 衆議院 山口3区)に「野党が後ろにいると思わないで話を聞いた方がいい」と進言し、河村氏は「政府としてもできる限りのことをする」と菅氏に電話で伝えた。厚労省に到着した大村氏は、夕闇が迫る中、幹部職員らと対策を協議していた。大谷泰夫官房長らは「正月休みは今日で終わりだ」と三々五々集まった。

「生活困窮者への対応は基本的に自治体の仕事です。中央政府の施設を宿泊に提供したことは戦後の混乱期もなかったはずです」。官僚たちは難色を示したが、適当な受け入れ施設はいまだに見つかっていなかった。大村氏は「これで麻生政権をつぶしたと言われたらどうするんだ。万策尽きたから開けるぞ」と宣言し、講堂の開放を決めた。

午後6時半ごろ、湯浅氏の携帯電話が鳴った。「私の判断で講堂を開けます」。大村氏の声だった。
 
◇(その3) 「すぐやれ!」叫ぶ村民 世論を意識、議員奔走

野党の議員たちが相次いで駆けつけた2日午後、東京・日比谷公園の「年越し派遣村」は寝床のない失業者と支援のボランティアであふれ返っていた。民主党雇用対策本部役員の高山智司衆院議員(比例区)は、菅直人代表代行の指示で現場に駆けつけた。「正直言って最初はイベントくらいの感覚で行ったら、全然違った。これは大変だと思った」という。

テントだけでなく、炊き出しの鍋や釜も足りなかった。合流した菅氏と周辺のレストランなどに調理場の提供を頼もうとしたが、正月休みで責任者がつかまらない。民主党本部ビルでの受け入れも、テナントとして入居しているため断念せざるを得なかった。
厚生労働省で対策を練っていた大村秀章副厚労相は午後5時半ごろ、千代田区の石川雅己区長に電話で支援を頼んだ。しかし、「正月休みに急に言われても対応できない」。派遣村からあふれた人たちが野党議員とともに厚労省前でシュプレヒコールをあげ、テレビで放映される事態だけは避けたかった。

同じころ、菅氏は隣接する中央区の矢田美英区長の携帯電話を鳴らした。「区長選で民主党も支援していたはずだ」と思い出した。「使ってない学校とかで受け入れられませんか」。矢田氏は「検討して部長に返事させます」と前向きだった。
首相官邸サイドも独自に動いていた。河村建夫官房長官の秘書官は2日から日比谷公園に行き、現場の状況を把握していた。河村氏は同日、旧知のよしみでコンビニ大手「ローソン」の新浪(にいなみ)剛史社長に電話を入れ、食料の提供を頼んだ。「1000個か2000個のおにぎりだったら何とかなる」という答えが返ってきた。

塩谷立・文部科学相(自民党 衆議院議員 静岡8区)は河村氏の指示で千代田区内に学校の空き施設がないか探したものの、回答は「難しい」。このため、河村氏は菅氏とは別に、矢田中央区長に直接電話で協力を求めた。「今回の件は一種の災害だと思っている。協力をお願いしたい」。すでに施設の選定に入っていた区長は協力を約束した。河村氏は自民党東京都連会長を務める石原伸晃幹事長代理(自民党 衆議院議員 東京8区)にも「東京都の知事部局を動かしてほしい」と要請した。

3日夕、東京・神山町にある麻生太郎首相(自民党 衆議院議員 福岡8区)の私邸。河村氏から派遣村について報告を受けた首相は「これからも支援を徹底してやってくれ」と指示した。
支持率急落にあえぐ麻生内閣にとって、派遣村をめぐって対応を間違えれば致命傷になりかねなかった。首相周辺は「通常国会の召集が5日に迫っていたことと、マスコミの関心が高かったことが、異例の判断の理由だ」と打ち明けた。

◇(その4) 国会では党略に縛られ

4日午後3時半過ぎ、日比谷公園内で約400人の「村民集会」が開かれた。講堂の使用期限が5日朝に迫っていた。村民のいらだちが募る中で、野党各党の幹部たちが集会に参加した。
菅氏は「何年後かには、この活動が日本の雇用、労働問題の大きな転機になったと言われることは間違いない」と派遣村の意義を強調したが、言い終わらないうちに「すぐやれ! すぐ必要なんだよ!」とやじが飛んだ。

共産党の志位和夫委員長(衆議院議員 比例区)は「与党を巻き込んで派遣切り防止のための緊急の立法措置が必要だ」と主張。拍手が起きた。社民党の福島瑞穂党首(参議院議員 比例区)は「派遣法の抜本改正を実現する通常国会にしよう」と呼びかけた。最後に新党大地の鈴木宗男代表(衆議院議員 比例区)が「雇用と宿舎を確保するための国会決議を出そうじゃありませんか」と提案すると、熱気に押されるようにその場で全野党幹部による文案作りが始まった。

決議の原案には「このままでは路上での死亡者が出る」とのくだりがあった。しかし、自民、民主両党の調整過程で削除され、7日の参院本会議で全会一致の採択となった。現場では部分的に協力し合った与野党も、舞台を国会に移すと再び党略に縛られた。
厚労省の調査では、雇い止めなどで職を失う非正規労働者は3月末までに約8万5000人に上る。社員寮など住居も同時に失うのは、状況を把握できた3万5208人のうち2157人だ。

5日以降、東京都内4カ所の施設に分散していた派遣村の失業者約500人は、12日から2カ所の旅館に移動する。村の実行委員会は生活保護の受給手続きが進めば、アパートなどに入居できる人が増えるとみている。ただ、派遣村を必要とする日本の雇用環境は何も変わっていない。
舛添要一厚労相は5日の記者会見で「個人的には」と断ったうえで、04年に解禁された製造現場への労働者派遣を再び禁止すべきではないかと問題提起した。ただ与党内では「今禁止したら、雇用切り捨ての口実になる」「企業にとっては雇用の柔軟性も大事だ」などと否定的だ。

派遣村の湯浅誠村長は「企業はまさにこういう時のために非正規労働者を増やしてきたのだから、自浄作用は期待できない。派遣村のモデルを全国に広げたい」と話している。

*******************************
じっくり読んでみたが、色々な立場の人間の思惑が見え隠れする内容である。まず私が気になっていた「厚労働省の講堂開放はいつ依頼したのか」という疑問は、1月2日であることがわかった。つまり公園に人があふれ出してからのことで、事前に持ちかけてはいなかったようだ。

今回1つのポイントだと思うのは、年末年始の休み。例年12月28日が仕事納めの職場が多い中、2008年は12月26日が金曜日だった。それで12月27日~1月4日がずっと休みだったことが考えられる。担当者とすぐに連絡がつかないのも、無理ないことだ。
記事には千代田区、中央区、東京都に協力を依頼した…とあるが、具体的に何か支援活動をしたかどうか不明である。たまたま日比谷公園があるからといって、そこにいる人々全員を助けなくてはいけない、という義務はあるまい。区は都に、都は国に「どうにかしてくれよ」と感じたはず。
厚労省も困惑したことだろう。副大臣に「これで麻生政権をつぶしたと言われたらどうするんだ」と言われたところで、「知るかバカ。それで困るのはお前みたいな与党議員で、俺たちじゃない」と思ったのではないか。そして講堂を開放した後の世論調査が1月12日に発表されたが、軒並み前回より下がり20%を切るところまで低下している。

また派遣村では与野党を超えた協力態勢があったものの、そこに政治色やイデオロギーがちらついていたのも事実。産経新聞によると、1月5日に日比谷公園から国会までを歩いたデモでは共産党と行動を同じくすることが多い、全労連、自治労連の街宣車が村民らを先導。「総選挙で政治を変えよう!」「消費税値上げ反対!」とシュプレヒコールを上げる光景もあったという。来るべき総選挙で、「わが党は派遣村に協力した。政府が無策だから、こういう問題が起きる」と、各野党は訴えることだろう。上の記事にある通り、国会で効果的な働きをしているかは疑問だが。

不況の象徴であるかのように扱われる派遣村。しかし、そこに集まった人々が全てではないことを留意しなくてはいけない。また、この後には2009年問題も控えている。政府や行政、民間がどのように対応していくか注目していきたい。

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