有森裕子引退レース

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■<東京マラソン>有森裕子さん、笑顔と涙の引退レース (2007年2月18日 毎日新聞)

両手を合わせてゴールテープを切った有森裕子転んで傷だらけになりながらも、笑顔と涙でコースを駆け抜けた。引退レースとなった18日の東京マラソンを、2時間52分45秒の5位で完走した五輪女子マラソン2大会のメダリスト、有森裕子さん(40)。山あり、谷ありの競技生活を象徴するラストランに「最高の終わり方ができました」と声を詰まらせた。 
ハプニングが起きたのは22キロ過ぎ。後続ランナーと足がぶつかり、前のめりに転倒した。腰や胸を強打し、両方のひざと手のひらから出血。「気がついたら目の前に地面。これで終わりかと思った」。しばらく、うずくまったが、「きょうははってでもゴールすると私が言ったんだから」と自らを奮い立たせた。寒さで痛みがまひしたのを幸いに、懸命にゴールを目指した。
「アリモリという人が大勢走っているんじゃないかと思うぐらい、みんなが私の名前を呼んでくれた」。感激がこみ上げ、目頭が熱くなった。5年3カ月ぶり通算12回目のマラソンでタイムは最悪だったが、「満足です」という走りだった。

92年バルセロナ五輪で、陸上日本女子64年ぶりとなる銀メダルを獲得。かかとを手術するなどの苦難を乗り越えて挑んだ96年アトランタ五輪では銅メダルを手にした。その後、日本の陸上女子として初のプロ選手に。先進的な動きに、周囲から批判的な声も上がった。だが、企業を離れた利点を生かし、カンボジアの対人地雷除去支援などをするNPO(非営利組織)を設立し、国連親善大使や、スポーツ選手のマネジメント会社の役員も務める。

スポーツ選手として新たな道を切り開いてきた有森さんは「ランナーとして、やり残したことは、これからの人生でトライし、表現していきたい」と将来の夢を描く。レース後、恩師の小出義雄さんから「おまえの影響は本当に大きいよなあ」と声をかけられ、また胸が熱くなった。

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ゴールした後で笑顔を見せた昨日の東京は前夜から続く雨風で、体感温度はかなり低かった。運動会だったら確実に中止の天気。しかしマラソンが中止になることは、滅多にない。昨日の第1回東京マラソン参加者は、全部で3万870人。その中には有森裕子がいた。

日本女子陸上でただ1人、五輪2大会連続でメダルを取った選手。身長164.5cm、体重48kgという数字は高橋尚子(163cm 45kg)や野口みずき(150cm 40kg)に比べれば大きい。しかし、決して運動能力が高かったわけではない。彼女の武器は、強い精神力。厳しいコンディションの中でも粘り強く走る姿が、人々の感動を呼んだ。1996年に流行語になった「自分で自分をほめたい」という言葉を、覚えている方もいるだろう。98年に結婚したガブリエル・ ウィルソン(通称ガブ)について週刊誌に書き立てられることもあったが、それも注目度の高さゆえか。

キャリアのピークはアトランタ五輪と目されているが、自己最高記録を出したのはそれから3年後、99年のボストンマラソンだった。当時33歳の彼女が出したタイムは、2時間26分39秒。世界基準から見れば遅い数字であり、スピードレースで彼女が勝てないことを示していた。その後彼女は2時間30分を切る事ができなくなり、2001年に休養に入った。この時が事実上の引退と言えるだろう。

この東京マラソンでは勝負にもタイムにもこだわらず、走る姿をファンに見せることが目的だった。厳しい天候のみならず予想外のトラブルも起きてしまったが、何とかゴールすることができて良かった。日本女子マラソンのパイオニアとして、今後の活躍に期待したい。

・第1回東京マラソンのデータ
東京マラソン事務局によると、全体の参加者は3万870人のうち2万9852人が完走。完走率は96・7%で、初の開催、しかも雨の厳冬期という悪条件下では、極めて高い数字といえる。種目別では、車イスレースを含むフルマラソンが2万6058人中、2万5130人(完走率96.4%)。10キロ走では4812人中、4722人(同98.1%)だった。

また、沿道には178万人が詰めかけ、このうち競技の観衆は138万人、イベントの参加者が40万人。救護所で実際に手当てを受けたのは164人で、このうち16人が病院に搬送され、AED(心臓に電気ショックを与えて救命を図る、自動体外式除細動器)の使用は2人だった。

同マラソンはフジテレビ系が生中継を行い、視聴率は関東地区で23・6%だった。瞬間最高視聴率は、佐藤智之選手(旭化成)が2位でゴールした直後の31・3%だった(いずれもビデオリサーチ調べ)。

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