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1万mの平均タイムが、全20チームで30秒以内に収まった第83回大会。下馬評では「史上最大の戦国駅伝」と言われたが、結果的には順天堂大学の圧勝となった。順大のどこが強かったのか、上位3校を比較して考えてみる。
■上位3校の比較
まず3位の東海大。1区に佐藤悠基(2年)、2区に伊達秀晃(3年)という両エースを配し、先行逃げ切りを図る。それぞれの区間記録は1位(区間新)と2位。2区を終えた時点で4分11秒のアドバンテージを得た。しかし、その後がいけなかった。3区の藤原昌隆(2年)が区間18位、5区の石田和也(4年)が同14位と失速。稼いだ貯金を往路で使い果たしてしまった。復路では順位を守る事に精一杯で、それでも最後に順位を落とした。結果的に、区間賞を取れたのは佐藤1人。また区間順位で2ケタが3人いた事が痛い。今季の同大は出雲大学駅伝を制しているが、箱根では思うような戦いができなかった。
2位の日大については、チームのバランスは取れていた。ただ、区間12位となった5区・阿部豊幸(2年)の成績が、トップより5分7秒も離れてしまった事は大きい。また、区間賞を取れたのは6区・末吉翔(4年)のみ。期待された3区のG.ダニエルは2位に留まった。10区で総合2位に食い込んだものの、順大の背中は遠かった。平均的なレベルは高かったが、飛び抜けた選手がいなかった事…それが日大の敗因といえるだろう。2006年の大学3大駅伝(出雲、全日本、箱根)で日大は全て2位に終わった。
最後に、優勝した順大。出だしは悪かった。1区、2区が14位と12位。3区にタスキをつないだ時点で、1位東海大とは6分36秒離れていた。しかし、焦らずに追い上げていったのが良かった。4区の佐藤秀和(2年)が区間賞。高校時代は佐藤悠基と友に「W佐藤」と言われた実力者だったが、大学では怪我に泣かされていた選手である。そして5区では山の神が降臨。今井正人(4年)が、3年連続で区間賞を獲得。しかも、自身の記録を25秒縮める区間新をたたきだした。順大は昨年に続き、往路優勝を果たす。そして翌日、復路でも快走。手堅い走りでタスキをつなぐと、9区・長門俊介(4年)が区間賞、10区・松瀬元太(4年)が区間新。盤石の体制で復路をも制し、総合優勝を果たした。区間賞が4人(うち2人が区間新)という、レベルの高い内容だった。
今年のTV中継で何度も紹介されたのが、昨年8区で大ブレーキとなった難波祐樹である。レース中に脱水症状を起こした彼が区間最下位に沈み、順大は優勝を逃した。卒業後JAL AGSに所属する彼は、大手町のゴールに姿を現した。最終走者を待ちながら、他の部員・OBと共に校歌を唱う。そして胴上げを見届けた彼の瞳には、安堵が窺えた。順大にとっては、2年越しの想いが込められた勝利だったわけである。
■視聴率
第83回大会の視聴率は往路:27.3%、復路:28.5%だった。昨年の数字(往路:27.6%、復路:29.1%)に比べて、いずれも若干落ちた。上位の順位変動が少なく、また10位までのシード権争いが激しくなかった事から、視聴者の興味をかきたてなかったのかもしれない。それにしても、中継を観ていると本当にCMが多い。
■注目選手の成績
箱根駅伝にはのべ200人が出場するが、注目を浴びる走者は決して多くない。せいぜい1割がいいところだろう。その中で、個人的に注目した選手を取り上げる。往路に偏ってしまった事は容赦されたし。
まず、何といっても佐藤悠基(東海大2年)だろう。日本の学生長距離界のエースは、箱根との相性もいい。1年の時に3区を走って区間新。今年は1区で区間新。1994年に渡辺康幸(早大2年 現:早大監督)が作った記録を7秒縮めた。走行途中に脚がけいれんを起こしていたので、万全の状態なら更に速かったかもしれない。今後も活躍が期待される選手だ。
その佐藤のライバルと言っていいのが、竹澤健介(早大2年)。昨年も2区に出場したが、11位と惨敗。今年は区間賞を獲得した。予選会からの出場となった早大は、総合6位で5年ぶりにシード権を獲得。来年のチームを、竹澤がどれだけ引っ張れるだろうか。
期待外れだったのがM.モグス(山梨学2年)である。昨年2区を走り、区間賞を獲得。今年は区間新も期待された。しかしオーバーペースで飛ばした結果、途中で失速。6位に沈んだ。チームは総合12位。昨年準優勝の山学大は、予選会へと回った。木原真在人(中央学2年)も残念な結果。昨年は1区で区間賞を獲得し、能力は日本人トップクラス。ゲスト解説を務めた法大OBの徳本一善(現:日清食品)の一押しだったが、区間7位に終わった。
3区では上野裕一郎(中大3年)が意地を見せた。長野・佐久長聖高時代から全国的に知られた選手で、鳴り物入りで大学に入学。しかし箱根では好成績を残せず、高校の1学年後輩の佐藤悠基の陰に隠れた存在だった。今回の快走で、存在感を見せつけた形。その上野と共に04年入学組のドラフト1位クラスだったのが、北村聡(日体大3年)である。5区では今井正人(順大4年)に挑みしばらく併走するも、途中で振り切られた。今井の5区における速さは別格であり、箱根の伝説として今後語り継がれていく事だろう。
今井は卒業後トヨタ九州入りする事が決定しており、今後はマラソン選手の道を歩んでいく事になる。この今井が活躍できるか否かが、箱根駅伝の存在意義を測る1つの物差しとなるだろう。というのも、箱根の5区は「世界と戦えるマラソン選手の育成強化」を念頭に、コース設定されているからだ。この区間で圧倒的な強さを見せた今井がマラソンで活躍できなければ、その狙いは怪しくなってくる。
こんな事を書くのも、「箱根駅伝そのものがマラソン強化にはつながらない」と、私が考えているから。今井には頑張ってもらいたいが、もし日本から世界トップクラスのマラソン選手を輩出したければ、別の方法を考えた方が良いと思う。 {詳しくは【徹底的 箱根駅伝】内の「◆コース設定への疑問」「◆燃え尽きる選手達」を参照されたし}
■1年生の成績
どんな新人がいるのか観るのも、箱根駅伝の楽しみの1つ。しかし、今年は上級生を圧倒するような新入生は少なかった。記録を見ると、好成績を残したのは高橋優太(城西大)、G.ダニエル、中原知大(共に日大)の3人くらい。そもそも、1年生を起用する大学が少なかったのである。
その中でも異色なのが駒沢大学で、1年生を3人起用してきた。もっともこの3人は11月に行われた全日本大学駅伝にも出場していて、宇賀地強:2区2位、高林祐介:5区3位、深津卓也:7区1位とチームの優勝に貢献している(詳しくはこちら)。残念ながら、3人とも箱根では良い結果を残す事ができなかった。この経験を来年以降に生かして欲しいものである。
◆関連記事・サイト
・【徹底的 箱根駅伝】 2006年第82回大会と箱根駅伝への考察
・『東京箱根間往復大学駅伝競走』
・スポーツナビ 箱根駅伝 第83回(2007年)
・金哲彦のLife Style Running:順天堂大学が総合優勝
作っている人:ガチャピン
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